皮膚の病気には、たくさんの種類があります。
原因もいろいろで、外的因子によるもの、内的因子によるもの、加齢によるものなど、極めて多様です。
簡単に治るものもありますが、根気よく気長につき合っていく必要のある疾患も少なくありません。しかも治療法は限られています。しかしたとえ決定的な治療法は無くても、適切なスキンケアと軟膏などの外用療法を行うことによって、より良い状態を保ち、慢性的な皮膚病と上手につき合っていくお手伝いをいたします。
また、「皮膚は内臓を映す鏡」という言葉を耳にされたことがおありかと思います。内臓をはじめとする体内の状態や血行の調子、ホルモンバランス、ストレスの有無などが複雑に絡み合って、肌の症状として現れて来ることが少なくないのです。
ですから、小さな皮膚疾患を検査しているうちに思わぬ内科的疾患が見つかるケースもありますので、皮膚の異常が見られたら、早めにご相談ください。
以下によくみられる皮膚疾患について、ご説明いたします。
アトピー性皮膚炎は、繰り返す慢性の湿疹と皮膚の乾燥が特徴的な皮膚疾患です。痒みが強いのですが、掻くとさらに悪化し、悪循環を招きますので、治療によって痒みを抑える必要があります。
喘息のほか、アレルギー性鼻炎やアトピー性皮膚炎のある家系に出やすい傾向があり、また、ダニや食べ物などのアレルギーが起きやすいのも、アトピー性皮膚炎の特徴です。
アトピー性皮膚炎の治療にあたっては、皮内反応や血液検査などで検査した上で、外用薬のステロイド剤、免疫抑制剤、保湿剤等を用います。
皮膚科を受診される患者様に非常に多く見られる疾患です。ブツブツや小さな水泡、赤みなどが混ざって現れ、痒みもともないます。
原因として考えられるものには、自己免疫や食べ物アレルギー、ダニ、ハウスダスト、薬疹、ウイルスなどがあります。湿疹・かぶれなどは痒みをともなうことが多いため、ついつい掻いてしまいがちです。しかし、掻いて治ることは無く、むしろ、掻くことによって患部をかき壊してしまい、化膿や悪化を招き、患部が拡大してさらに痒くなる、という悪化のサイクルに陥ることが少なくありません。痒みや炎症を抑える薬を上手に使って、こうしたサイクルを抑える必要があります。
痒みの強い、丸っぽい形をしたわずかに盛り上がったミミズ腫れが数分~24時間以内に出来て消えていく皮膚疾患をじんま疹と言い、4週間以内に治るものを急性じんま疹、それ以上続くものを慢性じんま疹と言います。
じんま疹の原因は、食べ物や内服薬、細菌やウイルスの感染などさまざまで、検査としては皮内反応や血液検査IgE RAST法、一般血液検査等を行いますが、慢性じんま疹では原因が特定出来ないことが少なくありません。じんま疹の治療には抗アレルギー剤や抗ヒスタミン剤、H2ブロッカーなどを使います。
水虫は、白癬菌(はくせんきん)というカビ(真菌)の一種が足の皮膚に入り込んで発症する疾患です。白癬菌の増えやすい夏に症状の悪化が多く見られるのが特徴で、足白癬は趾間型、小水疱型、角質増殖型に分類されます。
趾間型は、足指の間の皮膚がふやけたように白く濁り、痒いのが特徴です。
冬は症状が治まりますが、夏になるとまた再発し、2次的に細菌感染を併発しやすいタイプです。
小水疱型は、土踏まずや足の縁などに小水疱が多発します。これも夏に悪化し、痒みをともないます。 角質増殖型では、足の裏から縁にかけての広範囲で皮膚が厚くなり、冬の方が乾燥でひび割れ等を起こしやすいです。
治療は病態に応じて、塗り薬や内服薬を使います。
イボウイルスの感染によって発症し、人から人へ感染し、うつったイボはいじるとどんどん増える傾向があります。
イボの治療としては、液体窒素療法、内服療法、外用療法、炭酸ガスレーザーによる除去等を行います。
たこや魚の目は、足の特定の場所に継続的に圧力がかかって発症します。
たこは皮膚の表面の角質が部分的に肥厚したもので痛みはありません。魚の目は肥厚した部分にさらに圧がかかって硬くなり、芯をもっているため、歩くたびに刺激されて痛みが走ります。
また、足の裏によく出来るのが足底疣贅(そくていゆうぜい)という一種のイボで、これを魚の目と勘違いすることがあります。しかしこれはイボウイルス性の腫瘍であり、知らずに削ってかえって広がってしまうこともありますので、この鑑別をきちんとつけるためにも、皮膚科専門医への受診をお勧めします。
単純ヘルペスウイルスの感染で起き、顔に出来る1型と外陰部や臀部などの下半身に出来る2型ウイルスの2種類があり、初感染で口内や外陰部に発疹が生じたときは高熱と激痛がともないます。
ヘルペスの治療としては、抗ウイルス剤の内服と外用を行います。発疹の出る前にチクチクする感じなどの予兆の出ることが多く、その時点で内服を始めると治りが早まります。
しかし、単純ヘルペスウイルスは神経節に入って潜伏するため薬で完全には除去することは出来ません。寝不足、疲労、風邪などによって免疫力が下がると増殖して再発しがちです。
脂腺の多いところに生じる湿疹で、頭部や顔、胸背部などに出来やすいのが特徴です。新生児や乳児に多く見られますが、大きくなるにつれて自然に出来なくなって来ます。
一方、問題なのは中高年の方の場合で、頭、顔、耳にフケがしつこく出て、痒みもあり、非常に憂うつなものです。
原因としては皮脂の成分の質的異常であり、皮膚の機能の老化が関係しています。また、でんぷう菌(マラセチア)の感染が関与することがあり、脂漏性皮膚炎の治療としては、強過ぎないように気をつけながらもしっかり洗うのが基本で、そうした後にステロイド軟膏とでんぷう菌に効く抗菌剤を塗ります。
水痘・帯状疱疹ウイルスの感染によって発症しますので、水痘を経験した人にだけ起こります。
頭部から下肢までの間の片側の一定の神経支配領域に神経痛様の痛みをともなった小水泡が帯状に出来ます。顔に出来ると顔面神経麻痺、内耳の障害によるめまい・耳鳴りなどが起こることがあります。
痛みに悩まされることが多く、帯状疱疹後疼痛として長い間痛みが残ってしまうことがあり、しかもこの痛みは治りにくく、それが問題です。
帯状疱疹は、いち早く皮膚科を受診して早く治すことが大切で、これにより帯状疱疹後疼痛の発生頻度を少なくすることが出来ます。